Web制作会社として複数のクライアントサイトの問い合わせフォームを運用管理していますが、「SEO対策いかがですか」「弊社のシステム導入を検討しませんか」といった営業スパムが本物の問い合わせに埋もれてしまい、クライアントへの転送が遅れることが度々ありました。そこで、ChatGPT Workの自律型AIエージェント機能を使い、受信した問い合わせメールを「スパム」「営業」「本物の問い合わせ」に一次仕分けさせてみました。結論から言うと、「テンプレート的な営業文面」「明らかなスパム」の判定はほぼ100%の精度で、しかも一瞬で片付きました。ただし、「これは新規の受注につながりそうな問い合わせか、それとも既存クライアントを装った便乗営業か」というグレーゾーンの判断だけは、結局自分の目で本文と送信元ドメインを確認するしかありませんでした。「機械的に弾ける部分」と「文脈を読まないと判断できない部分」がはっきり分かれた、という話です。

なぜ試したか ― 「見逃し」と「見落とし」の両方が怖かった

弊社では現在5社ほどのクライアントサイトの問い合わせフォームを保守運用しており、届いたメールを一次チェックしてから該当のクライアント担当者に転送する運用をとっています。ところが、問い合わせフォーム経由で届くメールの体感で4割近くが「SEO対策の提案」「Web制作の外注先探し」「謎のシステム導入案内」といった営業スパムで、それを見分けて捨てる作業自体がかなりの負担になっていました。

忙しい時期に営業スパムのチェックが後回しになり、本物の問い合わせの転送が半日以上遅れてしまったことが実際にありました。クライアントからは「返信が遅い」と思われかねない状況で、これはさすがに仕組み化する必要があると感じ、ちょうど話題になっていたChatGPT Workの自律型エージェント機能(メール受信箱を継続的に監視し、ルールに基づいてタスクを実行できる機能)を使って一次仕分けを任せられないか試してみることにしました。

「スパムを消してくれるだけでも助かる」くらいの期待値で始めたんですが、思ったより仕事してくれました。

AIエージェントに一次仕分けをさせてみた

分類ルールを言語化してエージェントに渡す

まず、これまで自分が無意識にやっていた「これは営業だな」と判断する基準を、あらためて言葉にしてChatGPT Workに渡しました。

以下のルールに従って、受信した問い合わせフォームのメールを
「スパム」「営業」「本物の問い合わせ」の3つに分類してください。

- 件名や本文に「SEO対策」「上位表示」「システム導入のご提案」
  といった売り込み文言が含まれる → 営業
- 送信元が一括配信ツール特有のドメイン・フォーマットである
  → スパム
- 具体的な制作依頼内容、予算感、納期の言及がある
  → 本物の問い合わせ(要即対応)
- 判断に迷う場合は「要確認」として理由を添えて報告する

分類結果は、件名・送信元・分類・判断理由を一覧にして
毎朝9時にSlackの#toiawase-checkチャンネルに投稿してください。

このルールを渡したところ、明らかなテンプレート営業文面やスパムはほぼ確実に検出され、毎朝Slackに分類済みの一覧が届くようになりました。今まで1件ずつ本文を開いて読んでいた作業が、一覧をざっと眺めるだけで済むようになったのは想像以上の時短効果でした。

「要確認」に分類されたものを見てみる

1週間ほど運用してみると、全体の1〜2割程度が「要確認」として上がってきました。中身を見てみると、以下のようなパターンでした。

  • 既存クライアントの名前を騙って「追加のご提案があります」と送ってくる便乗営業
  • 個人名で送られてきているが、文面が異様に丁寧すぎて営業感が薄い問い合わせ
  • 制作会社ではなく個人事業主からの「ホームページを作ってほしい」という、内容自体は本物だが予算感が読み取れない依頼

「要確認」に振り分けてくれるだけでも十分ありがたいんですが、そこから先は結局自分の仕事でした。

微妙だった点 ― 「新規案件かどうか」の嗅覚はAIには渡せない

一番困ったのが、「これは新規の受注につながりそうな本物の問い合わせか、それとも巧妙な営業か」の見極めでした。AIエージェントは文面のパターンでしか判断できないため、丁寧に書かれた営業メールを「本物の問い合わせ」と誤判定することが週に1〜2件ありました。結局、次の確認作業は自分でやるしかありませんでした。

  • 送信元ドメインをWHOISで調べ、法人としての実在性を確認する
  • 過去にこのクライアント名を騙った営業がなかったか、社内のやり取り履歴を検索する
  • 「要確認」「本物の問い合わせ」に分類されたものは、必ず本文全体を自分の目で読んでから転送する

AIエージェントの分類結果をそのままクライアントに転送するのは危険で、「一次フィルタ」として使うのが正解だと分かりました。とくに新規案件の可能性がある問い合わせは、機会損失を避けたいという気持ちが働くため、多少手間でも人間が最終確認するプロセスを外せないと判断しました。

実際にやった手順

  1. 直近3ヶ月分の問い合わせメールを見直し、「スパム」「営業」「本物の問い合わせ」の判断基準を言語化
  2. ChatGPT Workのエージェント機能に、メール受信箱の監視と分類ルールを設定
  3. 分類結果を毎朝Slackの専用チャンネルに一覧投稿するよう設定
  4. 「本物の問い合わせ」「要確認」に分類されたものだけ、本文全体を自分の目で確認してからクライアントへ転送
  5. 誤判定が起きたパターンを週次でルールに追記し、分類精度を継続的に調整

5)のルール追記を怠ると徐々に誤判定が増えていく感覚があり、完全放置はできないというのが正直な実感です。

それでも導入する価値があると判断した理由

グレーゾーンの判断は残りましたが、それでも導入してよかったと感じています。理由は3つです。

  • 明らかなスパムを開かずに済むようになった。体感4割あった営業スパムの9割以上が自動で仕分けられ、確認する母数自体が大きく減った
  • 転送の遅れがなくなった。毎朝一覧が届く仕組みになったことで、後回しにして半日以上放置してしまうリスクがなくなった
  • 判断基準が明文化された。これまで自分の感覚だけでやっていた「これは営業っぽい」という判断を言葉にしたことで、他のスタッフにも引き継げるようになった

どんなクライアントサイトなら導入すべきか ― パターン別の判断基準

今回の経験を踏まえて、社内では次のような基準で導入可否を判断することにしました。

  • 問い合わせフォームからの営業スパムが多く、転送作業が負担になっているサイト → 今回のように分類ルールを言語化してエージェントに渡す価値が大きい。まずは1サイトで試して精度を確認するのがおすすめ
  • 問い合わせ数自体が少なく、1件ずつ丁寧に読んでも負担にならないサイト → 無理に自動化せず、これまで通り人力で確認した方がリスクが小さい
  • 新規案件の獲得を問い合わせフォーム経由に強く依存しているサイト → 「要確認」に振り分けられたものを見逃さない運用体制(担当者の確認漏れを防ぐダブルチェック)を先に整えてから導入する

まとめ

  • 問い合わせフォームの営業スパムと本物の問い合わせ、AIエージェントによる一次仕分けは明らかなスパム・テンプレート営業の検出ではほぼ完璧な精度だった
  • 一方で**「新規案件につながりそうか」というグレーゾーンの判断は、結局自分の目で本文とドメインを確認するしかなかった**
  • 次にやるべきアクションは、分類結果を「そのまま転送する」のではなく「一次フィルタとして使い、要確認・本物の問い合わせは必ず人間が最終確認する」運用ルールを先に決めておくこと
  • 誤判定パターンを週次でルールに追記する運用を怠ると精度が下がっていくため、完全放置ではなく継続的なチューニングが前提になる